アスリートレポート

2016年1月 6日

アスリート交差点:「楽しい」が原動力 原点に戻り走り込む(高桑早生 毎日新聞掲載コラム第4回)

毎日新聞 2015年12月25日掲載

アスリート交差点:「楽しい」が原動力 原点に戻り走り込む=パラリンピック陸上・高桑早生

 ドーハで10月に行われた国際パラリンピック委員会(IPC)世界選手権では、走り幅跳びで銅メダルを獲得しました。目標としていた5メートル台(5メートル09)の記録を出し、跳躍競技ではこれまで漠然としていた好成績への思いが「メダルを取りに行こうと思えば取れる」と、輪郭がはっきりしてきたように感じています。一方で、100メートル、200メートルの短距離種目では決勝に進めませんでした。この冬の取り組み方に対する意識の変化を与えた大会でもありました。
 走り幅跳びにも課題はまだあります。踏み切るときは義足である左を使うのですが、その後の滞空時間が短いということです。長く跳ぶためには、反対側の右の健足(義足をつけていない方の足)を振り上げる必要があります。そうすることによって、斜め上に飛び出すようなイメージになる。この感覚をつかむためには、何度も踏み切りの練習をして体に覚え込ませる必要があります。
 改善点がありながら幅跳びに手応えをつかんではいますが、私のアイデンティティーは走ることにありますし、それは変わりません。短距離に次ぐ位置づけだった幅跳びの記録が伸びているのは、自然な流れ。競技に相関性はありますが、取り組み方の時間軸が違う。そう考えると、幅跳びもいつか記録が伸びなくなる時期が来ます。ジャンパーに転向しようという考えにならないのは、幅跳びがうまくいったことによって、短距離に対するこだわりが増したからでもあります。
 この冬はもう一度、自分の原点に立ち返ることにしました。やはり、いっぱい走り込むことに尽きます。リオデジャネイロ・パラリンピックは来年。持ち味である力強い走りをもっときめ細かく磨いていく必要があるのかもしれませんが、基礎の部分を高めていくと考えれば不安はありません。
 結果を残しても、悩みが残る。そういう意味では競技者としてレベルアップしたのかなとも感じます。コラムのタイトルにあるように「楽しい」から競技をする気持ちに変わりはありませんが、ようやく自分の立ち位置が理解できた。リオを前に、非常に大切なことに気づいたように思います。
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 ■人物略歴
 ◇たかくわ・さき
 埼玉県熊谷市出身。小学6年で骨肉腫を発症し、中学1年で左脚膝下を切断した。初出場した2012年ロンドン・パラリンピックで陸上100メートル、200メートルともに7位。エイベックス所属。23歳。

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